Sの概念 concept of self

By | 2014年9月11日

池見酉次郎(九州大学名誉教授)の提唱する日本式交流分析の中心概念。

S(セルフ)は「人の心身両面をふくめた全体」、「人間存在の全体、現実存在としてのわれわれのあり方」と定義され、以下の性質をもつ。

1.絶対的に個性的であり、独創的である。

2.「考える葦」といわれるように、宇宙を理解する知恵を有する。また、生きる、あるいは死ぬことの意味を考える理性の働きでもある。

3.人は人間の手で育てられ、周囲・自然とのかかわりなしには生きられない相依存関の存在である。

Sの視点から自我状態を見ると、われわれの存在の全体を表わす一円相の中心に現実存在そのものを示すSがあって、このSからそれぞれの状況に応じてP的な心、A的な心、C的な心が展開していくという、人間存在により即した考え方としての構造分析が成り立つ(図)。

米国のTA学者ジェームス,M(James,M)も、人格の「内的な中核」には全体性と神聖さを体験する超個的機能があるとし、スピリットという概念でとらえている。

池見はスピリットはSの概念と深く通じるという。

図 Sの概念

図 Sの概念